TULSAとHIFUの比較(治療の特徴)
タルサ(TULSA)と同じ「超音波」を用いるハイフ(HIFU)と違いをご説明します。 ハイフは肛門から挿入した器具から直腸の壁を経由して超音波エネルギーを発振する方法で、虫眼鏡で太陽の光を集めるように、1カ所にエネルギーを集中させて、その焦点となった位置が高温になって組織が焼けます。この焦点を少しずつずらしては焼くことを繰り返しながら必要な範囲を焼いていきますが、この操作は手動またはコンピュータ制御で行われます。しかし、焦点の周囲もかなり加熱されるため、焼ける範囲と焼かない範囲の境界線が不明瞭になりやすい問題点があります。また、直腸からエネルギーを発振するため、直腸の熱損傷が生じる可能性があるのと、直腸の反対側の前立腺組織にエネルギーが届きにくい問題点もあります。 タルサは、この問題点を克服しています。タルサ治療中はMRIの中で常時組織の内部の温度を監視して超音波出力を調節して過剰に加熱しないように自動調整されるため、誤差1mm程度の明確な境界線で焼ける範囲と焼けない範囲を区切ることが可能となっています。そのため、ハイフのみならず、全摘手術、放射線治療といった従来の治療法で問題となる尿道括約筋と勃起神経へのダメージを精密に避けることが可能となります。また、超音波が直腸を経由しないため、直腸への障害はなく、前立腺の中心から放射状に加熱するため、エネルギーの届きやすさにかたよりがなく、がんの位置による治療効果への影響はありません。大きな前立腺の治療も可能となります。 ハイフでは、事前に検査したMRIや組織検査の結果を参考にしてがんの位置をハイフを操作する際のエコー画面上で推定して治療を行います。 一方で、タルサではがんの位置を確認できるMRIの画面上で直接加熱する範囲を指定するため、がんの部位を正確に加熱することが可能です。そのため、がんの部位だけを焼く局所治療を行うことも可能で、周囲の組織への影響を極めて少なくすることも可能となります。
タルサ(TULSA)とハイフ(HIFU)を比較した表もご参照ください。
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HIFU |
4 |
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超音波発振方法 |
前立腺の中心にある尿道から放射状360度に発振する |
直腸の壁を経由して後から前へ発振する |
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超音波到達距離 |
中心から30mm程度で90ml以下の前立腺であれば全体に到達する(90ml以上の前立腺はまれ)。小さな石灰化は回避可能。 |
直腸の壁(前立腺の後方)から30-45mm程度で大きな前立腺(40ml以上)では前立腺の前方に到達しにくい。大きな石灰化があると超音波が到達しない。 |
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• 通常40ml程度まで • 40ml以上ではあらかじめ前立腺を小さくする治療が別途必要 |
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温度制御の方法 |
治療中MRIが前立腺内部の温度をミリ単位で測定し続けて、その情報を元に超音波出力を自動制御して温度をコントロールするので、境界線が明瞭で、温度の過不足が生じない |
リアルタイム計測による温度制御はない |
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周囲の組織への影響 |
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病変部位の認識 |
治療中にMRIでガンのある部位が確認できるため、正確な治療が可能であるのと同時に、ガンのある場所だけの治療(フォーカルセラピー)も可能 |
治療前のMRIの画像を超音波装置に取り込み、超音波画像上で癌病変の位置を特定しつつ治療。フォーカルセラピーが可能。 |
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治療時間 |
40-60分程度(MRI室滞在時間は2-3時間程度) |
1時間程度 |
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図解 |
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[null] |
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治療成績の比較*
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TULSA |
HIFU |
4 |
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前立腺体積縮小率 |
90% |
60% |
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PSA低下率 |
92% |
88% |
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術後1年以降の生検で |
65% |
68% |
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勃起障害残存率 |
23%(1年目) |
38%(2年目) |
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尿失禁残存率 |
2.6%(1年目) |
11%(2年目) |
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尿道狭窄発生率 |
2.6% |
35% |
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直腸穿孔発生率 |
0% |
4% |
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(一時的な)尿閉 (自力で尿を出せない) |
8.7% |
34% |
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*TULSAの治療成績は米国第2相臨床試験の結果、HIFUの治療成績はEDAP社Ablatherm米国FDA承認時データ
社会医療法人 北楡会 札幌北楡病院 泌尿器科
前立腺MRI超音波治療センター