TULSAの特徴
・尿失禁が非常に少ない
・勃起障害が少ない
全摘手術は過去には開腹手術が行われていましたが、近年ダヴィンチロボットシステムの普及により、ロボット支援下手術が広く普及し、開腹手術に比べて手術の負担は大きく軽減しました。括約筋機能温存、神経温存手術の努力がなされていますが、手術後長期間続く尿失禁(尿取りパッドを装着した生活)、勃起障害はいまだ未解決の問題です。放射線治療は「切らない」治療ですが、周囲の臓器に対する副作用が問題となります。近年保険適応になった放射線治療の一種である陽子線治療や重粒子線治療では、放射線がかかる範囲をさらに縮小することにより周囲の臓器、すなわち膀胱や直腸への影響が少なくなりました。しかし、粒子線の治療精度をもってしても、前立腺にぴったり接している括約筋や勃起神経を照射する範囲から完全に除外することは困難であるため、尿失禁、勃起障害の副作用は問題となります。 タルサ(TULSA)では、ミリ単位の精度で治療(加熱)範囲を指定できるため、全摘手術や放射線治療と比べて、がんに対する治療効果は同等ですが、尿失禁や勃起障害の発生率がかなり低く抑えられています。 その他の特徴として、タルサでは局所治療(がんのある部位のみを治療)が可能です。以下の表に示した副作用の発生率は米国の治験でタルサ治療を前立腺全体に行った全腺治療の結果であり、局所治療を行うことで副作用をより少なくすることが可能であると考えられています。 また、入院期間は全摘手術よりも短く、通常2か月近くかかる放射線治療より短い治療期間となっています。 全摘手術後にがんが局所に再発した場合の根治できる救済治療は放射線治療しかありません。放射線治療後に再発した場合には、放射線を照射した部位を手術することはとても危険性が高いため現実的ではなく、根治できる救済治療はありませんでした。タルサは、放射線治療後の局所再発に対して行うことができます。また、タルサ治療後にもし局所再発した場合、再度タルサ治療を行うことが可能だし、全摘手術、放射線治療のいずれも救済治療として追加することが可能で、タルサ治療は柔軟性の高い治療となっています。
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全摘手術 |
放射線治療 |
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治療範囲 |
ガンの状態に合わせて治療範囲の調節が可能 |
全腺治療 |
全腺治療 |
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治療効果の確認方法 |
当日に治療効果が確認できる |
提出した前立腺の病理検査結果から再発の危険性が予測可能 |
PSAを長期的にチェックして上昇しないか確認するしかない |
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治療後の回復 |
数日 |
週単位 |
時間経過とともに悪化 |
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サルベージ治療 (完治しなかった場合の救済治療) |
・再度TULSA可能 ・全摘手術も可能 ・放射線治療も可能 ・ホルモン治療も可能 |
・放射線治療は可能 ・ホルモン治療は可能 |
・TULSAによる救済療法は可能 |
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長期毒性 |
なし |
・尿失禁 ・勃起不全 ・鼡径ヘルニア |
放射線晩期障害 ・尿失禁 ・勃起障害 ・放射線膀胱炎 ・放射線直腸炎 |
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TULSA
・全摘手術
・放射線治療
の治療成績比較
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TULSA |
全摘手術 |
放射線治療 |
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臨床癌の残存率 |
21% |
10-24% |
25% |
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尿失禁残存率 |
2.6% |
15% |
4% |
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勃起障害 |
23% |
79% |
65% |
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尿道狭窄 |
2.6% |
9% |
2% |
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消化器毒性 (下痢・便意切迫・便失禁) |
0% |
15% |
25% |
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社会医療法人 北楡会 札幌北楡病院 泌尿器科
前立腺MRI超音波治療センター